夏休みの特集

日文3年のふーです。
リブフレンズでは7月と8月の特集として、先生方に読むおすすめの本をききました。
今回は、私たちリブフレンズのメンバーが授業を受けている先生にお聞きしています。
先生方、おすすめしていただき、ありがとうございました。

追記におすすめされた本のことを書きます。



足立直子先生のおすすめの本
わたしが・棄てた・女 遠藤周作著

堀川真希先生
口語訳古事記
比べてみるとよくわかる![図解]古事記と日本書紀★

郭順伊先生
砂の器
風に舞いあがるビニールシート

石原淳也先生のおすすめの本
Phonology: An Introduction to Basic Concepts (Cambridge Textbooks in Linguistics) Roger Lass Cambridge University Press
世界の言語と日本語
実践日本語教授法
銃・病原菌・鉄
吉野裕子全集
人間はどこまでチンパンジーか?

金田文雄先生
ゲド戦記 ル・グイン著
指輪物語 トールキン著
ナルニア国物語 C.S.ルイス著

森田繁登先生のおすすめの本
万葉仮名でよむ「万葉集」 石川九楊著 岩波書店 2011
 『万葉集』はすべて漢字で書かれた歌集であるが我々が通常目にするものは「漢字仮名混じり文体」であり原書(すべて漢字のテキスト)で読むということは稀である。
『万葉集』と『古今集』・『古今和歌集』を始めとする「和歌」を比較したとき後者はその主要なテーマである花鳥風月や恋に対する日本人の完成を枕詞・掛詞など技巧をちりばめみごとに昇華させている。それに比べ『万葉集』はなぜか硬質で和歌とは異質な感じがする。『万葉集』は中国文化である漢字を使って「漢詩」風のものから和歌を感じさせるものまで4500首が収めてある。しかし漢字の羅列で歌を詠むという行為は漢詩ならともかく「日本人の心情を吐露する歌」を作るにあたって日本語・日本文法のニュアンスを託すことは到底不可能である。そこで日本語の音に充てる(あたかも現在の平仮名のように)ことにより漢字を使いながらも漢字の呪縛から逃れる一方で日本語の音として漢字を使い日本語の歌を作る発明が万葉集では行われている、これが万葉仮名である。
 国語史的に平安時代初期に「ひらかな=女手」という超一台改新が起り和歌はすべてひらかな(清音のみ!)によって歌がよまれるようになる。万葉仮名はその過渡期に用いられた極めて稀有な文字である。著者石川九楊は書家の立場から漢字の持つ意味(訓)と音に注目しながら歌を読み解いてみせる。原文(全部漢字)と漢字仮名混じり文を併記してみると「東野炎立所見面而反見為者月西渡」「東の野に炎の立つ見えて返り見すれば月傾きぬ」
 原文のテキストの方が歌の躍動感がリアルに迫り来る「万葉ワールド」のど真ん中にいる感じです。また『万葉集』は初期の漢詩風から中期・後期に見られる日本語のリズム(五・七調)への移行に伴う万葉仮名の使い方も興味深い。詠み人も天皇・皇族を始めご存知の大伴家持、山上憶良を始め多くの防人などがどの様な万葉仮名で歌を詠んだのか(方言バージョンもあるそうです)。日本語の歴史に興味がある方も無い方も御一緒に万葉ワールドへ出発。

中国農民調査 陳桂棣、春桃著 納村君子、椙田雅美訳 文芸春秋 2005★
 中国安徽省で起こった農民運動の顛末を調査したもので後に中国当局により発禁になった図書の日本語訳である。この調査は鄧小平の「先富論」を基本とした「改革開放政策」とそれに続く歴代政府の政策により今や日本を抜いてGNP世界第二位の中国であるが5%の人間がすべての富を所有するとまで言われているその実態の影の部分には深刻な農村・農民問題が所在する。
 現在も現在も各地で起こる中国人民の暴動は農村と農民にその根源を持つもの、少数民族と漢民族との軋轢・衝突に起因するものなど多種多様であるが中国の農村問題はとりわけ都市と農村との貧富の差、学歴差による差別、地方政府の腐敗、大部分の耕地に向かない農地、旱魃・大洪水などの農作物への被害、最近では地方政府役員による農民の強制収用など例を挙げる暇も無い。しかしもう一つ見逃せないのは戸籍の問題で中国には農村戸籍と都市戸籍が存在し、農民は農地に束縛され身動きさえできないのである。
 こうした農民で起こった様々な農民運動(事件・事故)は地方政府の手によって闇へと葬り去られ決して中央政府に届くことは無い。この図書を読むまでは経済発展の著しい都市部に目が向いていたがその裏で農村・農民が抱える様々な矛盾、農村戸籍問題など全く無知であった。私たちはマスコミが報道する一時的な情報(当然情報の取捨選択があり編集されたうえで報道される)で世界の動きを知っている(つもり?)と思ってはいないだろうか。この一冊により改めてそう認識させられた力作である。


西敦子先生のおすすめの本
孫崎亨著 日本の国境問題★
小出裕章著 原発のウソ★

大場美和子先生
新しい日本語教育のために  J. V. ネウストプニー著 岩波新書 1982

佐藤茂樹先生のおすすめの本
こころ 夏目漱石著
 何を読むか、一冊をと求められたら、『こころ』を勧めます。一言で言えば、三角関係とエゴイズム。ただそれだけのように思いますが、表現が詩的で哲学的です。
・「他(ひと)の懐かしみに応じない先生は、他を軽蔑する前に、まず自分を軽蔑していたものとみえる」
・「しかし君、恋は罪悪ですよ」
・「教壇に立って私を指導してくれる偉い人々よりも、ただ一人を守って多くを語らない先生のほうが偉く見えたのであった」
・「私は今より一層淋しい未来の自分を我慢する代りに、淋しい今の自分を我慢したいのです。自由と独立と己れとに充ちた現代に生まれた我々は、その犠牲としてみんなこの淋しみを味わわなくてはならないでしょう」
・「自分に頭脳のある事を相手に認めさせて、そこに一種の誇りを見出すほどに奥さんは現代的ではなかった。奥さんはそれよりももっと底の方に沈んだ心を大事にしているらしく見えた」
いかがですか。辟易したという方がいらっしゃったら申し訳ありません。文脈の中で読めば引用部分が輝いて見えると思います。もし、この夏期休暇中に読んで面白くなかったら、来年読んでください。来年も読破できなければ再来年。いつかは、きっと心にしみ入る時が来ると思います。
 私は高校時代に何度も挫折しました。ひょっとすると大学一年においてもそうだったかもしれません。鎌倉の海水浴場の場面を退屈に読みました。それが、ある部分に達した時、寝食も惜しんで読んでいました。最後あたりでは終わるのが惜しくてゆっくり読んでいました。Kは、先生はなぜ死ななければならなかったのでしょうか。人を信じること、人を裏切ること、その違いは案外小さいように思います。


佐藤恒夫先生のおすすめの本
平安朝の生活と文学 池田亀鑑著 角川文庫★
 古典文学の作品を通して見る貴族たちの日常生活が平易に説明されている


田中圭子先生のおすすめの本
田辺聖子訳 源氏物語


先生のおすすめの本は以上です。
いつも夏休みは長いようであっという間に過ぎてしまいます。知らなかった本、敬遠していた本を読むチャンスでもあります。
何か1冊、できたらもっと!読書をしてみようと思うとき、図書館や本屋さんに立ち寄る際に、大変参考なります。書名の横に「★」がある本は広島女学院大学図書館では見つからなかった本ですが、書店にあるかもしれないと思い、この記事を書きました。
また、推薦文をいただいた本には、その先生のコメントを引用いたしました。
最後に、先生方、おすすめしてくださり、本当にありがとうございました。
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by libfriends | 2011-07-30 22:44